「選択肢の幅」の観点でゲームプレイを考える
「選択肢の幅」を軸とするゲームプレイについて思いを馳せたので、考えたことをまとめます。前半部分はたぶん「まぁそうだよね」って感じのことが書いてあるので、目次を見て好きなところを読んでください。
#忍尾将棋 の戦術について「選択肢の幅」を軸とする組み立て方があるなと思ってツイート書いてたらすごく長くなったのでブログにまとめてみようと思います。
— かく🎲遊陽ゲームズ@C96(金)南ヌ43a (@SusabiG) 2019年7月17日
目次
リソースとその変換効率
一口にゲームデザインといっても切り口は色々とあって広すぎるので他プレイヤーとの間で生じる リソースの奪い合い に焦点を絞ります。 ここで言う リソース はゲームによって異なりますが、例えば典型的なTCGでは以下のようなものが該当します。
- ライフポイント
- カード枚数
- カード回転効率(マナカーブ)
- 手数(テンポ)
- 非公開情報
大抵のリソースは他の種類のリソースと価値を変換できます。カード1枚を使って相手のライフを2減らしたり、ライフを1点支払ってカードを1枚獲得したりします。チェスのキャスリングは本来数ターンかかるアクションを一手で済ませることができる価値が高いアクションです。価値の変換効率が高いほど強い カード/アクション であり、ブラフ要素やランダム要素を抜きにして考えると、基本的にはその状況下で最も強い カード/アクション やその組み合わせを多く使用したプレイヤーが勝ちます。言い換えると、勝利点への変換効率が高くなるようなゲームプレイをするということです。
選択肢の幅
プレイヤーは勝つために、コスパの高いカードやアクションを選択します。裏を返せば、高コスパのアクションを封じることで低コスパのアクションを相手に強制することができれば相対的に有利です。そのため、現在どのカードやアクションが選択可能かという「選択肢の幅」が考慮されることになります。これには以下の2つのアプローチが考えられます。
- (1) 自分の選択肢を広げる(=狭めない)
- (2) 相手の選択肢を狭める(=広げさせない)
どういったアクションが選択肢を増減させるのかはゲームによって異なるので、以下では拙作『忍尾将棋』を例に考えます。 『忍尾将棋』のルールはゲームマーケット公式ページで公開しています。
忍尾将棋(シノビショウギ) | 遊陽ゲームズ | 『ゲームマーケット』公式サイト | 国内最大規模のアナログゲーム・ テーブルゲーム・ボードゲーム イベント
忍尾将棋におけるリソース
『忍尾将棋』のゲームに関係するリソースを列挙すると以下のような分類ができます。
- コマの数
- 盤上のコマの数
- 持ち駒の数
- 盤上のコマと持ち駒の合計数
- 非公開情報
- 持ち駒
- 盤上の『伏』コマ
- ゲームから除外されたコマ
- 手番のアクション
- 盤上のコマ数
- コマの移動距離
コマの移動距離について補足をすると、ゲームの勝利条件は相手の『姫』に自分のコマを重ねる(0距離に接近する)ことなので、距離の概念が入ってきます。「姫への不意打ち禁止」ルールは、特定状況下でコマの移動距離を0にするルールと言い換えることができます。
忍尾将棋における選択肢の幅を増減させるゲームプレイ
(1) 自分の選択肢を広げる(=狭めない)
コマの移動が阻害されないように効率良く置くことがこれにあたります。移動範囲が左側に広いコマは右寄りに置く、『姫』の前には斜めに下がれるコマを置くなど、その後のゲーム展開までを考慮して「死に駒」(後述)にならないようにする。
(2) 相手の選択肢を狭める(=広げさせない)
コマの種類(移動特性)による直接的な選択肢の増減以外では、主なものとして以下の3つのパターンが考えられます。
王手をする
一番分かりやすいのは「王手」。相手は必ず対応しなければならないので、相手の選択肢は数パターンに限定されます。 自分の『姫』が2列目に上がってしまうと相手からの王手を受けてしまいやすいので、『姫』を前線に上げる場合は慎重に行う必要があります。
死に駒を作る
2つ目は相手の駒を「死に駒」にすることです。例えば、以下の配置の場合の『鎌』がそれです。
「死に駒」は実質的に戦況に影響を与えないコマなので、1コマ少ない状態でゲームをすることになります。手番順と空きマスの状況を操作して、相手にコマの移動範囲と噛み合わない場所にコマを置かせることができればその後の展開が有利になります。
死に駒を戦線に復帰させるのは1~2手かかるので手番を余計に消費してしまいます。
アクション必須を利用して本意でない手を打たせる
最後は、相手の動ける範囲を狭めることで本意では無い手を打たせることです。毎手番で手を指さなければならないルールがあるため、手番が回ってくるタイミングとそのときの盤面の状況によって、相手の本意でない手を打たせる状況を作ることができます。
例えば以下のような盤面では、手前の赤姫にとっては
- 『姫』を動かすと負けてしまうのでそれは選択はできない。
- 盤上の『伏』コマを動かすことは相手の『伏』コマの種類とコマ交換を考慮するとリスクが高いので避けたい。
- 相手『姫』の左右のスペースに持ち駒を配置するのはコマ損に繋がるので選択肢外。
となり、実質的には持ち駒を3箇所の空きマスのいずれかに打つしかない状況と言えます。(ただし、『伏』コマのパターンなどによっては2の選択も可能性はアリ)
(ちなみにこういう盤面は、製作時には「圧迫面接」と呼ばれていました)
まとめ
- 他プレイヤーと奪い合うリソースを効率良く勝利点に変換できれば勝ちに繋がる
- 勝利点への変換効率が高いリソースやアクションに関する選択肢を増減させるゲームプレイを考えることができる
- 忍尾将棋おける「選択肢の幅」を操作するゲームプレイを考えた
最後までお読み頂きありがとうございました!
<2019/08/10 追記>
↓こういう死に駒の作り方もありますね
記事を読み直していて、相手の『伏』に自分の『姫』を隣接させることで『伏』を身動きとれなくするテクニックが書いて無いのに気付きました。広義の意味での "死に駒"。#忍尾将棋 https://t.co/1peWYs10jI
— かく🎲遊陽ゲームズ@C96(金)南ヌ43a (@SusabiG) August 9, 2019