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ボードゲーム制作サークル「遊陽ゲームズ」のブログ

【ゲームデザイン】秘匿情報のデザインについて考えたこと

昨年遊陽ゲームズを結成し、この1年間で『忍尾将棋』『ガラクタリウム』という2つのアナログゲームを作りました。どちらもプレイヤー個別に持っている情報をキーにした駆け引きゲームです。
また、現在制作中の『イビルパクト』も正体隠匿要素のあるゲームです。

どうやら僕はそういった情報の非対称性を持つゲームが大好きなようです(もちろんそれ以外も好きです)。であれば、それをより深く理解し今後の制作に役立てるためにも一度考えをまとめてみたいと思います。

趣味でゲームを作っている者の雑感なので、軽い気持ちで読んでもらうのが良いです。あわよくば、何かしら気付きや考えるきっかけを提供できれば幸いです。

目次

この記事で扱う内容

この記事では、プレイヤーが個別に持っている情報を「秘匿情報」と呼び、概ね以下のような特徴を持つゲームを対象に考えます。

  • プレイヤー毎に自身しか知らない情報を持ち、その情報をゲーム中の駆け引きに用いることができる。
  • 他のプレイヤーが持つ秘匿情報を推測することがゲーム進行における主要な関心事となる。

ブラフ・正体隠匿・手札のあるカードゲームあたりの、プレイヤー同士のインタラクションが強いゲームをイメージしてもらえれば良さそうに思います。

意思決定と秘匿情報

プレイヤーの意思決定を以下の3つの要素で考えてみます。

(1) 選択できるアクションは何か
(2) 起こりうる未来の事象の絞り込み
- ex1) 山札やダイス目に関する確率
- ex2) 他のプレイヤーが何をしそうか
(3) アクションそれぞれのリスクとリターン

アクションはその後のゲーム展開を作ります。また、予想される未来のゲーム展開はリスクとリターンに影響を与えてプレイヤーの選択肢を変えます。そのため、(1)~(3)は相互に影響し合っています。

ゲーム進行の中でシステム側が情報の手掛かりを出す場合も考えられますが、この記事で対象としているようなゲームでは、情報はプレイヤーのアクションによってもたらされることが多いと思われます。(なぜならゲームの主要な関心事に対して決定的な情報をカジュアルに公開してしまっては、ゲームの根幹が崩れるからです)

正体隠匿ゲームの場合、プレイヤーは自分だけが知っている情報を基にアクションをするので、アクションの内容から隠された情報を推測することができます。一方、ブラフゲームのように、プレイヤーがいくつかの選択肢の中から任意に秘匿情報を選択可能な場合、他のプレイヤーはそのプレイヤーの置かれた状況から推測を行うことができます。例えば、拙作『ガラクタリウム』では、手札が全て公開されている状態で行われるため、状況から親プレイヤーの伏せた情報を推測することができます。

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上記の両方の性質を持つゲームも考えられます。秘匿情報を設定しつつ、それを前提として以降のアクションを行うゲームです。例えば、拙作『忍尾将棋』もその1つです。積み上げられた一連のアクションの整合性を考えることによって推測が行われます。

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(1)~(3)それぞれの観点で、プレイヤーが考慮すべき要素を絞り込んで意識決定を助けるのが「絞り込みフィルタ」です。

絞り込みフィルタ

僕がゲームデザインをする場合に「絞り込みフィルタ」を意識しています。(一応ことわっておくと、「絞り込みフィルタ」は勝手に言っているだけなのでゲームデザイン用語でも何でもありません。)

ゲームはある程度複雑でないと、底が見えてしまい面白くありません。最適解が自明である中でやるゲームは予定調和であり「作業」になってしまうからです。ゲームをやるからにはハラハラドキドキしたいものですし、解を探索するのも面白さの1つです。何度も遊んで貰いたいと思ったら、毎回最適解が異なりリプレイ性が高いゲームデザインが必要となります。しかし、そのようなゲームは得てして複雑になりがちです。

しかし、複雑で意思決定ができないようなゲームは遊びにくく、「半か丁か」の博打になってしまいます。予想や仮設の無いアクションは、その結果から次のプレイに繋がるようなフィードバックも得られません。そのため、何かしらの手がかりによって「仕組みが担保する複雑さ」と「実際のプレイ中の複雑さ」のギャップを埋める必要があります。

【絞り込みフィルタの例】

極端な例としてTCGを取り上げます。

マジック・ザ・ギャザリングをはじめとしたTCGは毎年数百枚のカードがリリースされます。それだけのカードが存在意義をもって実装される背景には、要素の多い複雑なシステムがあります。 そんな物量と複雑さのマジックで意思決定が成り立つのは、情報を段階的に絞り込めるからです。

(下に行くほど絞り込まれるイメージ) - カードプール全体 - 開催フォーマット - デッキのアーキタイプ - メタゲーム - ゲームの進行度合い - 現在の手札・盤面 - 今注意すべきカード

相手の山札や手札という秘匿情報があっても、何重ものフィルタによって現実的な複雑度まで絞り込みがなされます。

盤外の楽しみ(デッキ構築)がそれなりのウェイトを占めるTCGと違い、ボードゲームではメタゲーム以前のフィルタが存在しません。そのため、ゲームの進行状況やプレイヤーのアクションが手掛かりとして重要になってきます。また、そもそもプレイヤーが多くのカード効果を把握していることは基本的に期待できないため、「枚数は少なく、個別のテキストは短く分かりやすく」を強く意識する必要があるでしょう。

ルール・カード効果を考えるときのtips

  • ①ルールレベルで考えること
    • カウンティングさせるかどうか
    • 秘匿情報の種類
    • 何によって絞り込めるか、絞り込み条件の数
  • ➁カード効果レベルで考えること
    • プレイヤーが秘匿情報に集中するための単純化
      • 1つの効果で参照・操作するリソースはそれぞれ1つ
      • 効果をグルーピングする
      • パラメータに規則を設ける
    • アクションが提供するフィルタ
    • ブラフが有効に働くかどうか

①ルールレベルで考えること

推理・推測を必要とするゲームでは、プレイヤーはそれまでに得た情報から可能性を絞り込んでいくことによって推測の確度を高めていきます。そのため、少なからず「確率計算」や「カウンティング」の要素があります。また、候補を絞り込めるからこそ、相手の裏をかく「ブラフ」が有効に機能します。とはいえ、ゲームのガチ度によってこのへんの基準や考え方は変わるかと思います。カウンティングできないようにする、というデザインも十分アリです。

秘匿情報の設計とチューニングにおいては、どれくらいの確率で推理を的中させられるようにするかがキモと考えています。硬派なゲームならば、状況証拠から概ね2~3つくらいの候補に絞り込むことができ、そこから先はブラフや駆け引きの領分とするのが僕は好みです。というのも、その先の展開を考えたときに候補が多すぎると将来の見通しが極端に悪くなるので、プレイ感としては「運ゲー」になってしまうからです。

また、秘匿情報の種類が多いと同様に先の展開が読みにくくなるので途端に「分からない」ゲームになります。3種類を越えてきた辺りからヤバくなってくる肌感です。単純に、プレイ中に覚えておかなければならないことが増えて遊びにくいという問題もあります。
余談ですが、これに対して最近考えているのは、確率を偏らせることでプレイヤーの意思決定の逃げ道を作れるのではないかということです。カード種類ごとの枚数分布が偏っていればプレイヤーは困った時に期待値の高いものを選べば良いので、いくらか遊びやすくなるかもしれません。

作っているゲームが「遊びにくいな」と感じたら絞り込みフィルタが適切に機能していない(もしくはそもそもフィルタが足りてない)のを疑ってみると良いかもしれません。

別のアプローチとして、複雑さから目を剃らさせるために情報を隠してしまうのも手かもしれません。考えても無駄、という状態にしてしまうことで思考の負荷を下げることができますが、駆け引き上重要なところには使えない手法でもあります。

➁カード効果レベルで考えること

極力シンプルに作っておく方が良いというやつです。複雑度の設計や情報の切り分け・グルーピング、みたいなキーワードになりそうですが、話が広がり過ぎてしまう気がするのでそのあたりの話は割愛します。 他プレイヤーの過去のアクションによって候補を絞りこむような場合には、ゲーム自体が覚えやすい要素で構成されていた方が遊びやすいです。(そもそも、プレイヤー同士の相互作用自体が一定の複雑さを担保します)

情報が価値を持つゲームである以上、アクションの結果のリソース変動に加えて「他プレイヤーに与える情報」が観点として必要でしょう。他のプレイヤーのアクションがそのまま絞り込みフィルタとして機能します。この観点でカード効果を考える際は、絞り込みが強く働いてしまうアクションは強く、重要な情報に絡まないアクションは弱くすれば良いでしょう。

また、ブラフがブラフとして機能するためには、「ブラフを張った結果、相手が選択を間違える」という構造があることが重要です。そうでないとブラフを張る意味がないですから。これを簡単に実現する方法は、"似てるけどちょっと違う" もしくは "結果が真逆になる" ようなものを入れることでしょう。違う部分に、期待した結果が得られないような細工をするだけです。ここはゲームで一番盛り上がる部分なので、感情の起伏を増幅するために見た目のデザインにも力を入れる価値があるところかと思います。

このあたりの話はゲームの一番のキモの部分であるのでゲームデザイン上意識しないことはないと思いますが、調整の自由度が高いゲームでは匙加減で悩むところなのではないでしょうか。

まとめ

秘匿情報を設計する際に考慮する所与の要素について、「絞り込みフィルタ」という概念を中心に

①ルールレベルでは、プレイヤーに推理・駆け引きに集中してもらうための複雑度の調整弁として絞り込みフィルタを設置すること
➁カード効果レベルでは、アクションがフィルタ機能を持つことを前提とした強さ調整とブラフが意味を持つためのデザインについて

それぞれ考えを書きました。

具体的な例をたくさん挙げた方が良いと思いつつ、筆が重くなってきたのでこのへんで。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

秘匿情報による駆け引きが好きな方は是非うちのサークルのゲームも見て行ってください。 susabigames.wixsite.com