SUSABI GAMES

ボードゲーム制作レーベル「遊陽(すさび)ゲームズ」からの情報を発信します。

BGA,TTS的サービスとデジタルボドゲの特徴について考えた

皆さんご存知の通り、巷を騒がせている新型コロナウイルスの影響はボドゲ業界にもダメージを与えています。ボドゲカフェはもろに打撃を食らっていて、大手と呼ばれるカフェも自粛期間の延長(~2020年5月末)に悲鳴を上げています。制作者は通販という手段で活動を継続できますが、全体として見ればイベントでの販売規模には及ばない状況でしょう。また、業界全体で見ても、遊ぶ機会が無い状況が続けば市場規模は当然しぼんでしまうでしょう。

この状況にあって注目を浴びているのがBGA(BoardGameArena)やTTS(TableTopSimulator)です。オンラインボドゲ会や製作者のテストプレイで利用され始めています。この記事では、これらのサービスで遊ばれるようなゲームを "デジタルボドゲ" と呼びます。

デジタルボドゲ

  • 製造のリードタイム無し
  • (物理的な)流通コスト無し
  • 在庫無し

というデジタルの利点を享受しつつも、同時に「ゲームロジックの実装が不要なデジタルゲーム」であることに可能性を感じます。

デジタルボドゲでは、今までデジタルゲームで必要とされていたゲームロジックの実装(=プログラミング)をユーザーのオペレーションに丸投げできることによって、そこにかかる技術・資金・時間をカットできます。安く高速にリリースできる代わりにユーザーに負担を強いるけれど、普段からボドゲに親しんでいる人にとってそこはデメリットにならないのが面白いところです。

既存のデジタルゲームと比較したときの弱味は、

  • システムによる厳格な裁定が行えないこと(イカサマできちゃう)
  • ユーザーを選ぶので規模が小さいこと

サービス運用の課題は、

  • デジタルへの心的ハードル低減とストレスの無いコミュニケーションの実現
  • 安全に遊べるコミュニティと文化規律の形成・維持(リアルなボドゲも一緒でこれが一番難しそう。mixiみたいなクローズドなSNSが必要になるのだろうか)。

…といった感じでしょうか。システムが仲介してくれない分、ユーザーのモラルに依存してしまうだろうなと。モラル問題は、現実のボドゲ会やネット人狼などで語られているとおりで、デジタルボドゲでも必ず問題となるでしょう。

BGA的なサービスは、物理制約に縛られないデジタルの利点と、「ペンとサイコロがあれば作って遊べる」アナログゲームの良さが融合した遊びのプラットフォームとして花開くのでしょうか。これからの展開に期待です。

『イビルパクト』Q&A、サポートページ

イビルパクト』 についてのQ&A、ユーザサポートのページです。

English Manual

docs.google.com

正誤表(説明書v1.0.0)

  • 説明書 4.セットアップ 2)(誤)先行プレイヤー → (正)先攻プレイヤー

Q&A

Q1. 契約状態の呪文カードを使用する場合、その属性の魔力が2以下でも使用可能ですか?
A1. はい。契約状態の場合、対応する属性の魔力は5とカウントするため、2以下の場合でも使用することができます。

Q2. ハスターの呪文カードは自分のターンに使用できますか?
A2. いいえ。ハスターの呪文カードは相手の呪文カード使用に対応して使用します。従って相手のターンでのみ使用できます。

Q3. ハスターの呪文を使用した場合、次の自分のターンで別の呪文カードを使用できますか?
A3. はい。ハスターの呪文カードは相手のターン中のアクションなので、次の自分のターンでの呪文カード使用にはあたりません。

Q4. 魔力条件5を満たした状態でクトゥルフの呪文を使用したとき、相手の手札が1枚しかありませんでした。どのような処理になるでしょうか?
A4. 手札1枚を公開し、それをゲームから追放します。効果の対象が全て存在しない場合でも呪文カードは使用でき、処理は可能な範囲で行います。

Q5. ハスターの能力によって打ち消す場合、どのタイミングで打ち消しの宣言が必要でしょうか?
A5. 相手が呪文の使用を宣言してから、呪文カードに書かれた一連の処理が開始する前までとなります。ハスターの呪文が、呪文カードの一連の処理に割り込むことはできません。例えば、クトゥグアの効果で魔導書を指定した後やクトゥルフの効果で捨てられるカードが判明した後に、ハスターの呪文使用を宣言して打ち消すことはできません。

ルールやコンポーネントについての疑問・質問がありましたら、当ブログ記事コメント、twitterHPのお問い合わせページなどからお問合せください。

『忍尾将棋』Q&A、サポートページ

忍尾将棋』 についてのQ&A、ユーザサポートのページです。

Shinobi Syogi English Manual


Q&A

  • Q1:直進移動アイコンの駒が移動する際に、味方の駒を飛び越えることはできますか?
  • A1:可能です。味方の駒を飛び越えて移動することができます。なお、相手の駒は飛び越えることができません。

その他、ルールやコンポーネントについての疑問・質問がありましたら、当ブログ記事コメント、twitterHPのお問い合わせページなどからお問合せください。

『カードル♪』考察~アグロデッキ編~

ぼくは『カードル♪』というLCG(カードゲーム)が好きです。システムはシンプルかつコンパクトにまとまっているし、個々のカードはトレードオフがしっかり効いておりとても良くできています。もちろん、カードル♪の特徴であるアイドルと楽曲も魅力的です。一緒に遊ぶ仲間が欲しいので、最近はことあるごとに周囲の友人にカードル♪を薦めています。

というわけで、布教も兼ねた考察記事を書いてみます。

ぼくがTCG・LCGなどのカードゲームを考える際には、まずはアグロ(速攻)デッキとコントロールデッキについて考えます。極端な戦術やデッキを考えることでそのゲームの特徴がつかみやすいからです。その中でもアグロデッキは構築しやすく1ゲームの時間も短いので真っ先に考察の対象になります。

この記事では、まずTCG文脈でのアグロデッキについて触れ、その応用としてカードル♪におけるアグロデッキの構築やプレイングについて考えてみます。

目次

アグロデッキの特徴

シンプルな戦術ゆえにコントロールデッキに比べると比較的にプレイングが易しく、事故率の面でも安定性が高いのがアグロデッキの魅力です。

アグロデッキの戦術

一般にアグロデッキは「相手が準備を整える前に勝つ」ことをコンセプトとする速攻デッキです。

ぼくはアグロデッキを「勝利点(多くの場合、相手のライフダメージ)に直結する行動にリソースをつぎ込む」ようなカード構成のデッキと解釈しています。使えるリソースをいかに効率的に勝利点に変換するかがキモとなります。手札を余らせては勿体ないのでガンガン消費するし、自分のライフも犠牲にするようなことも積極的に行います。勝てばチャラですから。

例えば、マジック・ザ・ギャザリングにおける超高速デッキ「スライ」は、効率良くカード使うための「マナカーブ」理論に基づいて練られたデッキです。スライを使うプレイヤーが多い対戦環境では、そのスピードに対抗する手段を持たないデッキタイプは勝つことが難しくなり、実質的にデッキの多様性が狭まります。

事故が起きにくい構成

多くのカードゲームは、カードが山札からランダムで供給されるため、欲しいカードが引けない、もしくは特定のカードを必要以上に引きすぎる「事故」が起こります。マジックでいうと土地事故がそれにあたります。ゲームのシステム上、事故は必ず一定の確率で起きるので仕方のないことですが、カード構成によって事故率を減らしてデッキの安定性を下げる努力は必要です。

大抵のアグロデッキは、そのコンセプトゆえにデッキのほとんどのカードが単体で勝利点に直結するカードになります。デッキの構成を尖らせることで「コンボパーツが揃わない」「切り札が引けない」などによる負けを回避できます。コンボを搭載したアグロデッキもあり得ますが、使えるリソースを最大限使うには引き運に左右されづらい構成である必要があるので、(よほど強力なコンボを除き)コンボへの依存度は低くすることが多いと思われます。

注意点として、カードル♪では自分のデッキでも相手のデッキでもない「ファンデッキ」という第三のデッキが存在するので、それを考慮する必要があります(後述)。

カードル♪のアグロデッキ構築のポイント

カードル♪におけるアグロデッキとはどのようなものになるのでしょうか?

カードル♪での勝利点は相手のライフではなくファンカードなので、アグロデッキの目的は とにかくファンを獲得しまくる ということになります。そのため、 なるべくボルテージ上昇にはリソースを割かず、より多くのカードをファン獲得に使用すること も重要です。

ここで、抑えるべきポイントは3つあります。

1. 沢山カードを使った方が効果が高い

これはほとんどの TCG/LCG に言えることではないでしょうか。

カードル♪のカード効果の設計は基準が明確です。基本セットのカードを見ると、カードデザインの基盤は「支払うコスト(アイドルの人数)は効果(獲得できるボルテージやファン獲得枚数)と正比例する」ようになっています。

アイドル1人が払えるコスト=ファン1枚=ボルテージ10%

これがベースです。これにアイドル固有のボーナスが乗ります。

ここで、ボーナス(アカリな獲得枚数+1、ヒナタならボルテージ+10%)の効果値はどのカードも一律であるため、3コストのカードを1枚使うよりも1コストのカードを1枚使う方が得られる効果は大きくなります。

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沢山カード使った方が得られる効果が高いため、1ターンに複数枚の楽曲カードを使う前提でデッキを構築するのが良いでしょう。

だからといって1コストの楽曲カードだけ詰め込んでも、「手札」リソースがすぐ枯れてしまうので勝利点15点には届かず勝つことはできません。

2. ボルテージに使うリソースを決めておく

リソースを可能な限り勝利点につぎ込むというのは上で述べた通りです。ボルテージは一定量以上は不要なので、無駄に上げ過ぎないように切り詰めて考えておく必要があります。

通常のアグロであれば、ボルテージ80%で動けるデッキ構成を前提に、必要なボルテージ量を確保するために何コストのカードが何枚必要か計算しておくと良いでしょう。ボルテージの上げ方によって、後続のターンで効率よく手札を消費できるかが変わってきます。

ファン獲得にカード枚数を割きたいのでボルテージはコスト3のカードを使って上げたくなります。また、ボルテージ獲得プラン次第で応援隊長の獲得優先度が高くなります。

3. ファンデッキのランダム性を制す

一般的なTCGのおけるライフが、カードル♪ではファンの得点です。そして、点数の異なるファンがランダムに出現するのがカードル♪の特徴です。

点数の低いファンや「やっかいなファン」などのデメリット付きのファンが出現すると、それを相手に取らせて自分は後続の点数の高いファンを取りたくなってくるのでゲームが停滞します。結果としてリソースを使いきれないし、相手が準備を整える時間を与えてしまいます。「相手が準備を終えるまえに勝つ」ことをコンセプトとするアグロデッキにとっては大きな課題です。

そのため、勝率を安定させるには困ったファンをどうにかしたり、ファンの出現状況に左右されにくいようにする、といった工夫が求められます。

カードル♪の基本セットでは「やっかいなファン」が唯一のお邪魔ファンでしたが、1ターンで複数枚のカードを使うことが多いアグロにとってはそれほど脅威ではありませんでした。しかし、拡張セットから登場した「口うるさいファン」が中盤以降に登場した場合、大きくゲームスピードが落ちる可能性があるため対策が必要となっています。

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口うるさいファンの攻略は重要度が高いため、以降はそれについて書きます。

口うるさいファン攻略

デッキ構築

デッキ構築の時点では以下のような対抗手段を用意しておくことが考えられます。

  • ①口うるさいファンを迂回してファンを獲得する
    • オハナの楽曲カード3種
    • Don't Be Afraid
  • ②デメリット効果を消す
    • 夢みずにいられない
    • 風になりたい
  • ③山札に戻す
    • サークルモッシュ
    • 家族
    • 愛してくれない王子様
  • ④獲得してボルテージが下がっても戦えるようにする
    • おいでよ、ヒナターランド
    • ヒナタの夢

プレイング

アグロデッキでは、最序盤に口うるさいファンが出た場合は獲得してしまった方が良い場合が多いです。

  • やっかいなファンでデッキに戻してしまうと後で困り事の種になる。
  • こちらが口うるさいファンを獲得していると青系デッキはファンを奪いにくくなる。

もちろん、相手がとってくれるならそれが一番良いのですが。

あとがき

カードル♪のアグロデッキについて書いてみました。僕は普段はコントロールデッキ(もしくはコンボデッキ)を使うことが多いので、アグロをメインで使う人の意見も是非聞いてみたいところです。

最初に書いたとおり、カードル♪はファン獲得とボルテージ獲得のトレードオフや各種カードの設計がシンプルかつシビアなところなど、考察すればするほどとても良くできているゲームと感じます。自身が楽しむためにも引き続き布教していこうと思います。

最後に宣伝となりますが、拙作『忍尾将棋』がカードル♪とコラボをしていただけることになっています。(カードル♪が好き過ぎてコラボを申し込んだところ、快諾して頂けました)

ゲームマーケット2020春が中止になってしまったため時期は調整中ですが、書き下ろしコラボイラスト入りのプロモカードの配布も予定しています。

なお、既にコラボ楽曲を収録したCDが発売されています!

こちらも是非よろしくお願いします!

【ゲームデザイン】秘匿情報のデザインについて考えたこと

昨年遊陽ゲームズを結成し、この1年間で『忍尾将棋』『ガラクタリウム』という2つのアナログゲームを作りました。どちらもプレイヤー個別に持っている情報をキーにした駆け引きゲームです。
また、現在制作中の『イビルパクト』も正体隠匿要素のあるゲームです。

どうやら僕はそういった情報の非対称性を持つゲームが大好きなようです(もちろんそれ以外も好きです)。であれば、それをより深く理解し今後の制作に役立てるためにも一度考えをまとめてみたいと思います。

趣味でゲームを作っている者の雑感なので、軽い気持ちで読んでもらうのが良いです。あわよくば、何かしら気付きや考えるきっかけを提供できれば幸いです。

目次

この記事で扱う内容

この記事では、プレイヤーが個別に持っている情報を「秘匿情報」と呼び、概ね以下のような特徴を持つゲームを対象に考えます。

  • プレイヤー毎に自身しか知らない情報を持ち、その情報をゲーム中の駆け引きに用いることができる。
  • 他のプレイヤーが持つ秘匿情報を推測することがゲーム進行における主要な関心事となる。

ブラフ・正体隠匿・手札のあるカードゲームあたりの、プレイヤー同士のインタラクションが強いゲームをイメージしてもらえれば良さそうに思います。

意思決定と秘匿情報

プレイヤーの意思決定を以下の3つの要素で考えてみます。

(1) 選択できるアクションは何か
(2) 起こりうる未来の事象の絞り込み
- ex1) 山札やダイス目に関する確率
- ex2) 他のプレイヤーが何をしそうか
(3) アクションそれぞれのリスクとリターン

アクションはその後のゲーム展開を作ります。また、予想される未来のゲーム展開はリスクとリターンに影響を与えてプレイヤーの選択肢を変えます。そのため、(1)~(3)は相互に影響し合っています。

ゲーム進行の中でシステム側が情報の手掛かりを出す場合も考えられますが、この記事で対象としているようなゲームでは、情報はプレイヤーのアクションによってもたらされることが多いと思われます。(なぜならゲームの主要な関心事に対して決定的な情報をカジュアルに公開してしまっては、ゲームの根幹が崩れるからです)

正体隠匿ゲームの場合、プレイヤーは自分だけが知っている情報を基にアクションをするので、アクションの内容から隠された情報を推測することができます。一方、ブラフゲームのように、プレイヤーがいくつかの選択肢の中から任意に秘匿情報を選択可能な場合、他のプレイヤーはそのプレイヤーの置かれた状況から推測を行うことができます。例えば、拙作『ガラクタリウム』では、手札が全て公開されている状態で行われるため、状況から親プレイヤーの伏せた情報を推測することができます。

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上記の両方の性質を持つゲームも考えられます。秘匿情報を設定しつつ、それを前提として以降のアクションを行うゲームです。例えば、拙作『忍尾将棋』もその1つです。積み上げられた一連のアクションの整合性を考えることによって推測が行われます。

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(1)~(3)それぞれの観点で、プレイヤーが考慮すべき要素を絞り込んで意識決定を助けるのが「絞り込みフィルタ」です。

絞り込みフィルタ

僕がゲームデザインをする場合に「絞り込みフィルタ」を意識しています。(一応ことわっておくと、「絞り込みフィルタ」は勝手に言っているだけなのでゲームデザイン用語でも何でもありません。)

ゲームはある程度複雑でないと、底が見えてしまい面白くありません。最適解が自明である中でやるゲームは予定調和であり「作業」になってしまうからです。ゲームをやるからにはハラハラドキドキしたいものですし、解を探索するのも面白さの1つです。何度も遊んで貰いたいと思ったら、毎回最適解が異なりリプレイ性が高いゲームデザインが必要となります。しかし、そのようなゲームは得てして複雑になりがちです。

しかし、複雑で意思決定ができないようなゲームは遊びにくく、「半か丁か」の博打になってしまいます。予想や仮設の無いアクションは、その結果から次のプレイに繋がるようなフィードバックも得られません。そのため、何かしらの手がかりによって「仕組みが担保する複雑さ」と「実際のプレイ中の複雑さ」のギャップを埋める必要があります。

【絞り込みフィルタの例】

極端な例としてTCGを取り上げます。

マジック・ザ・ギャザリングをはじめとしたTCGは毎年数百枚のカードがリリースされます。それだけのカードが存在意義をもって実装される背景には、要素の多い複雑なシステムがあります。 そんな物量と複雑さのマジックで意思決定が成り立つのは、情報を段階的に絞り込めるからです。

(下に行くほど絞り込まれるイメージ) - カードプール全体 - 開催フォーマット - デッキのアーキタイプ - メタゲーム - ゲームの進行度合い - 現在の手札・盤面 - 今注意すべきカード

相手の山札や手札という秘匿情報があっても、何重ものフィルタによって現実的な複雑度まで絞り込みがなされます。

盤外の楽しみ(デッキ構築)がそれなりのウェイトを占めるTCGと違い、ボードゲームではメタゲーム以前のフィルタが存在しません。そのため、ゲームの進行状況やプレイヤーのアクションが手掛かりとして重要になってきます。また、そもそもプレイヤーが多くのカード効果を把握していることは基本的に期待できないため、「枚数は少なく、個別のテキストは短く分かりやすく」を強く意識する必要があるでしょう。

ルール・カード効果を考えるときのtips

  • ①ルールレベルで考えること
    • カウンティングさせるかどうか
    • 秘匿情報の種類
    • 何によって絞り込めるか、絞り込み条件の数
  • ➁カード効果レベルで考えること
    • プレイヤーが秘匿情報に集中するための単純化
      • 1つの効果で参照・操作するリソースはそれぞれ1つ
      • 効果をグルーピングする
      • パラメータに規則を設ける
    • アクションが提供するフィルタ
    • ブラフが有効に働くかどうか

①ルールレベルで考えること

推理・推測を必要とするゲームでは、プレイヤーはそれまでに得た情報から可能性を絞り込んでいくことによって推測の確度を高めていきます。そのため、少なからず「確率計算」や「カウンティング」の要素があります。また、候補を絞り込めるからこそ、相手の裏をかく「ブラフ」が有効に機能します。とはいえ、ゲームのガチ度によってこのへんの基準や考え方は変わるかと思います。カウンティングできないようにする、というデザインも十分アリです。

秘匿情報の設計とチューニングにおいては、どれくらいの確率で推理を的中させられるようにするかがキモと考えています。硬派なゲームならば、状況証拠から概ね2~3つくらいの候補に絞り込むことができ、そこから先はブラフや駆け引きの領分とするのが僕は好みです。というのも、その先の展開を考えたときに候補が多すぎると将来の見通しが極端に悪くなるので、プレイ感としては「運ゲー」になってしまうからです。

また、秘匿情報の種類が多いと同様に先の展開が読みにくくなるので途端に「分からない」ゲームになります。3種類を越えてきた辺りからヤバくなってくる肌感です。単純に、プレイ中に覚えておかなければならないことが増えて遊びにくいという問題もあります。
余談ですが、これに対して最近考えているのは、確率を偏らせることでプレイヤーの意思決定の逃げ道を作れるのではないかということです。カード種類ごとの枚数分布が偏っていればプレイヤーは困った時に期待値の高いものを選べば良いので、いくらか遊びやすくなるかもしれません。

作っているゲームが「遊びにくいな」と感じたら絞り込みフィルタが適切に機能していない(もしくはそもそもフィルタが足りてない)のを疑ってみると良いかもしれません。

別のアプローチとして、複雑さから目を剃らさせるために情報を隠してしまうのも手かもしれません。考えても無駄、という状態にしてしまうことで思考の負荷を下げることができますが、駆け引き上重要なところには使えない手法でもあります。

➁カード効果レベルで考えること

極力シンプルに作っておく方が良いというやつです。複雑度の設計や情報の切り分け・グルーピング、みたいなキーワードになりそうですが、話が広がり過ぎてしまう気がするのでそのあたりの話は割愛します。 他プレイヤーの過去のアクションによって候補を絞りこむような場合には、ゲーム自体が覚えやすい要素で構成されていた方が遊びやすいです。(そもそも、プレイヤー同士の相互作用自体が一定の複雑さを担保します)

情報が価値を持つゲームである以上、アクションの結果のリソース変動に加えて「他プレイヤーに与える情報」が観点として必要でしょう。他のプレイヤーのアクションがそのまま絞り込みフィルタとして機能します。この観点でカード効果を考える際は、絞り込みが強く働いてしまうアクションは強く、重要な情報に絡まないアクションは弱くすれば良いでしょう。

また、ブラフがブラフとして機能するためには、「ブラフを張った結果、相手が選択を間違える」という構造があることが重要です。そうでないとブラフを張る意味がないですから。これを簡単に実現する方法は、"似てるけどちょっと違う" もしくは "結果が真逆になる" ようなものを入れることでしょう。違う部分に、期待した結果が得られないような細工をするだけです。ここはゲームで一番盛り上がる部分なので、感情の起伏を増幅するために見た目のデザインにも力を入れる価値があるところかと思います。

このあたりの話はゲームの一番のキモの部分であるのでゲームデザイン上意識しないことはないと思いますが、調整の自由度が高いゲームでは匙加減で悩むところなのではないでしょうか。

まとめ

秘匿情報を設計する際に考慮する所与の要素について、「絞り込みフィルタ」という概念を中心に

①ルールレベルでは、プレイヤーに推理・駆け引きに集中してもらうための複雑度の調整弁として絞り込みフィルタを設置すること
➁カード効果レベルでは、アクションがフィルタ機能を持つことを前提とした強さ調整とブラフが意味を持つためのデザインについて

それぞれ考えを書きました。

具体的な例をたくさん挙げた方が良いと思いつつ、筆が重くなってきたのでこのへんで。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

秘匿情報による駆け引きが好きな方は是非うちのサークルのゲームも見て行ってください。 susabigames.wixsite.com

『忍尾将棋』交流会特典と大会ルールについて

忍尾将棋交流会はおかげさまで次回2020/1/25㈯で四回目の開催となります。今まで以上に楽しんでいただけるよう、2020年はさらにグレードアップしていきます!

この記事は、そんな忍尾将棋交流会の特典と大会ルールについて書いたものです。

なんといってもコルクコースターが目玉賞品!!そしてなんと同日に京都でも忍尾将棋交流会が開催です!

目次

大会ルールについて

大会のレギュレーションが若干変わります。
※[7/5追記]本レギュレーションは遊陽ゲームズが主催する大会でのみ採用されます。それ以外の公認大会では異なる場合があります。

  • スイスドロー3回戦をデフォルトとします(参加人数や開催形式によって変更はあり得ます)
  • 1試合は2本先取した方の勝利となります
  • 初戦の先手後手は任意の方法(じゃんけんやダイスロールなど)で決定する
  • 2戦目以降は、直前の負けプレイヤーが持ち駒を見てから先手後手を選択する

今まではトーナメントでやっていましたが、今後はスイスドロー3回戦にしようと考えています。

初期手札の確認は、今までは何戦目であろうと常に先手か後手か選択してから初期手札を確認していましたが、初期手札が展開に与える影響の大きさを考え、負けた方が次の試合で有利になる方向で調整しました。「光芒一閃」環境では後手が先にしかける展開も発生するので、手札を見て後手を選択することも十分視野に入ると思います。

交流会の特典について

交流会の特典は大きく3つあります。

1. 大会戦績報酬

大会の戦績によって参加賞が貰えます。成績上位者は「忍」のコルクコースターから1つ、下位の方はシールから1つ選べます。コルクコースターはシーズン毎に貰えるプールが設定され、その中から選んで頂きます。ちなみに後述のログインボーナスでも貰えます。(※成績上位者の定義は調整中ですが、確実に半分の方はコースターが貰えるようにと考えています)

シーズン1(2020年1月~3月)は 「刀」「手」「苦」です。(「姫」は優勝賞品) f:id:susabi-games:20200123230119p:plain

2. 優勝報酬

優勝した方には「姫」のコルクコースター1つと賞状を贈呈します。

3. ログインボーナス

遊陽ゲームズが開催するイベント参加1回につき1点ポイントが貯まり、概ね2回参加する度にコルクコースターが貰えます。こちらはシーズンで指定された中からだけでなく、過去のシーズンのものも選択できます。また、製作者が気分で作ったグッズが貰える場合もあります。

あとがき

交流会のコンセプトややりたいことは過去の記事で触れているので、ご興味あれば是非読んでみてください。

コルクコースターは、全部集めればそれで忍尾将棋が遊べるな~~という着想から作ってみました(コマの面積が4倍!)。ログボと大会戦績により、最短で2回参加すれば3種類が揃います。コルクコースターは3ヵ月に一度、3種類追加を予定しているので、今までのように1.5か月に一度の開催だと丁度良いかなという感じです。

いつも忍尾将棋を遊んでいただいている皆様への恩返しとして、今後も交流会の運用資金が続く限りは継続的に「うれしい」をプレゼントしていきたいと思っています!

2019の活動振り返り

2019年の頭から活動を開始して丸一年が経とうとしています。年末ですし、今年一年を時系列で振り返ってみます。

年始に「作り続けること」を目標にサークル結成して以降、新装版や拡張セットを含む4つの作品をリリースしました。

ありがたいことに採算もとれており、長期的に「作り続ける」ことができそうな目処が経ったと言って良いと思います🙆
たくさんのアドバイスを下さった先輩制作者様方とゲームを購入頂いた皆様に感謝です!

目次

まずは全体的な振り返り

  • ボドゲ関係でめちゃくちゃ知り合いが増えた
  • 良縁に恵まれ、先輩&同期サークルさんと楽しみながら活動ができた
  • 新興サークルながら、来年の活動見通しが立つくらいには順調に滑り出せた(トータルで黒字)
  • ボドゲの作り方、イベント参加、交流会開催、販売プロモーションなど各種知見を蓄積できた
  • 最初から三人で役割分担していたのは馬力が出せて結果的に良かった

イベント(時系列順)

1月

  • デザイナーろくさんに声をかけつつ活動開始。冬休みに暖めていたシステムを会社の同僚にプレイしてもらってシステムを叩いていく。
  • 下旬にはイラストレーターざきさんを巻き込んでイラスト制作開始。

2月

3月

4月

  • 3日: 翔さんのPR相談会に参加させて頂きました
  • システムとコマ個別のデザインは終わり、説明書の最終調整
  • 徐々にプロモーションを開始

5月

  • GW直前から予約開始&イラスト紹介のツイート開始
  • ゲムマ2019春出展 => 40分で完売!

susabi-games.hatenablog.com

6月

7月

  • プレイマットとパッケージをリニューアルした現在の版を制作

susabi-games.hatenablog.com

8月

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9月

10月

11月

12月

最後に

夢中で駆け抜けた一年でした。ボドゲ制作はホントに面白い!1つの小さなプロダクトを一から作ってプロモーションして販売する一連の流れがどれも新しい発見の連続でした。ここまで支えて下さった先輩・同期サークル様と僕らのゲームをご購入頂いた皆さまに、改めて感謝申し上げます。

ゲームマーケットが順調に大きくなりマーダーミステリーという新ジャンルが出てきたりと、これまでと色々と変化が起こっている最中で、その波を感じながら活動できたのは貴重な体験でした。来年の日本のボドゲシーンは一体どんな状況になっていくのか、今から楽しみでなりません。

ただ、遊陽ゲームズがやっていくことはこれまでと変わらず、自分たちが面白いと思うものを作り続けるのみです。来年も面白いゲームと楽しい時間をお届けできるよう、自分たちも楽しみながら精一杯活動して参りますので、本年も遊陽ゲームズをよろしくお願い致します!